眠り姫の唇


岩城は甘い物を余り食べない。


買ってくるとすればへそを曲げた瑠香のご機嫌取りの為だ。


お店でそのピンクのパッケージを持ってレジに立っている岩城はなんともミスマッチで想像するだけで笑ってしまう。


瑠香はヒョイッとチョコを一粒口に入れ、テレビを付けた。


「あ、今日土曜日か。」


番組内容で明日が日曜日だと知る。


ちょうどいい。今日はこっちで泊まらせて貰おう。


何か掃除でもしようかと思ったが、掃除は遥かに岩城の方が得意なのでやっぱりそれはやめておいた。


岩城が帰ってくるのは月曜日の午前中の予定。


この広くてきれいな部屋でゴロゴロしてやろう。


米を炊いて豚の生姜焼きを作る。

辛うじてあったトマトを添えて出来上がり。

自分一人なので緑が少ない見た目には目を瞑る。


テレビを見ながら一人で食べる。


洗い物をしてシンクをいつも以上に磨く。


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