眠り姫の唇
シャワーを浴びて、ついでに裸のまま浴室を磨く。
今日は入らないけど、次入ろうと思ったとき楽だろう。
お風呂から上がって肌の手入れを入念にして、しばらくボーっとしてみた。
「………。」
…寂しい。
この部屋に入って初めて具体的に気持ちが形を持つ。
素直に寂しくなってしまった。
岩城の居ない部屋は違う場所みたいだ。
瑠香はごろんとシンプルなベッドに横になる。
二人で寝る時は幅がギリギリなのに、今は手を伸ばして大の字でいられる。
シーツに顔をうずめて少しでも岩城の影を追った。
まだ濡れた髪の毛から水の匂いがする。
「……岩城さん。」
瑠香は思った。
なんて柄でもない事しているんだろうと。
こんな…、男の部屋に勝手に上がって、男のベッドで、男の名前を呟くなんて。