眠り姫の唇
そんな事、今までしたことない。
しようと思った事すらない。
岩城に会ってから調子が狂いっぱなしだ。
どこまで振り回されたら落ち着くのだろうか。
なんとなく携帯を開ける。
気がついたらもう12時を越えていた。
「…日曜日。」
月曜日はまたその次だ。
「…早く帰って来て下さい、岩城さん。」
早く帰って来て、ほんのちょっと残っている不安と、誰かさんに対する恐怖を吹き飛ばして欲しい。
あの極上なキスで何もかも取り除いて欲しい。
あの大きくて武骨な手でギュッと掻き抱いて欲しい。
電気を消しても、
何回寝返りを打っても、
大きめの枕をギュッと抱き締めても、
瑠香はその晩なかなか眠れなかった…。