眠り姫の唇


ベッドで横になりながら、二人してしばらく見つめ合う。


「…何かいうことは?」


「お帰りなさい。」


「フッ、よし。」


嬉しそうに笑って、岩城が瑠香を抱き締める。


伸びて来た腕に、瑠香は幸せを感じずにはいられなかった。


「私にも何かいうことはありませんか?」


「……その格好、エロい。」


「そこ、普通“ただいま”ですよね?」


「ただいま。」


「お帰りなさい。」


そういって、岩城のYシャツに顔をうずめる。


化粧をしていない事を良いことに、寝起きのせいにして、瑠香は思いっきり頬を擦り付けた。


混じりっ気のない、岩城の匂いがする。


それだけで、胸が締め付けられた。


そんな風に猫みたいにすり寄る瑠香を、岩城はスーツがシワになる事など気にせず、より強く抱き寄せて耳元で甘く囁いた。


「なんだ?珍しいな。そんなに寂しかったのか?」



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