眠り姫の唇


「エロオヤジ…」


あまりにも悔しくて、思わず悪態が出る。


その言葉にあ゙ぁ?と岩城は顔を上げた。


「いっとくが、お前が悪いんだ。不用意に男の顔なんか触ってエロい顔してんなよ。」


「はぁ?」


瑠香は一気に顔が赤くなる。何言ってるんだこのオヤジ。全部私が悪いみたいな言い方して!

「なにもしないって言ったくせに!この下半身男!」


「お前が先に触って来たんだろうが!」


「だって傷が…っ!……。」



「…?」




そこまで言うと、瑠香は急に口ごもり、少ししゅんとした顔で消毒液とティッシュを手に取り、岩城の頬を濡らす。



「……。」



「…ごめんなさい。」


岩城は染みる頬に初めて怪我をしている事に気がついた。


「多分私がヒールで殴ったから…。」


ああ、あれか、と岩城は思い出す。


あまりにも急に目の前の女がしゅんとするので、思わず笑ってしまう。


さっきの威勢はどこへやらだ。

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