眠り姫の唇
自分ももぐもぐ食べながら、改めてどれだけお腹が空いていたのか実感する。
空腹の時はろくな事を考えない。
「あの、岩城さん。」
「ん?」
「岩城さんと私って付き合っているんですよね?」
「そうだ。」
当たり前のように言い切って、岩城はスプーンを進める。
「岩城さんに取って、付き合うってどういう事ですか?」
瑠香はなんとなく、思ったまま訪ねてみた。
「…変な事聞くんだな。」
「…。」
「そうだな。…。ん、“約束事”だな。」
少し考えて、岩城が空に呟くみたいに答えた。
「“お前は俺のもの”その代わり、“俺はお前のもの”。うん。そんな感じだ。」
「…私達、付き合ってるんですよね?」
「そうだ。」
「じゃあ、“岩城さんは私のもの”?」
「ふっ。そうだ。」
その響きに幸せそうに笑って、岩城が瑠香を見つめる。
「だから“瑠香も俺のもの”だ。くれぐれも忘れるなよ。」