眠り姫の唇


その手のひらが余りにも温かくて。


「もしかして、昔そういう事でツラい目にあったのか?」


「…。」


その温もりに、瑠香は一瞬泣きそうになった。


「もしそうなら、安心しろ。そういう事になるぐらいなら、その前にきっちり瑠香と別れるから。」


あっているのに、どこかズレた答えをくれる岩城のその手をそっと包み返す。


違うんですよ岩城さん。

確かに昔そんな事もありましたが、思ったより傷つかなかったんですよ。


こんなに悩んだり苦しかったりするのは、岩城さんだけなんですよ。


瑠香はそっとその言葉を飲み込んで、今は岩城の優しさに素直に甘える事にしたのだった。





















「え?!」


「うん、だから、もういいの。」


そう吹っ切れたような笑顔でリサにしゃべりかけながら、瑠香はまたもぐもぐとご飯を頬張った。


「私が信じてればいいかなーって。リサも昨日言ってくれたじゃない。」





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