眠り姫の唇
その手のひらが余りにも温かくて。
「もしかして、昔そういう事でツラい目にあったのか?」
「…。」
その温もりに、瑠香は一瞬泣きそうになった。
「もしそうなら、安心しろ。そういう事になるぐらいなら、その前にきっちり瑠香と別れるから。」
あっているのに、どこかズレた答えをくれる岩城のその手をそっと包み返す。
違うんですよ岩城さん。
確かに昔そんな事もありましたが、思ったより傷つかなかったんですよ。
こんなに悩んだり苦しかったりするのは、岩城さんだけなんですよ。
瑠香はそっとその言葉を飲み込んで、今は岩城の優しさに素直に甘える事にしたのだった。
◆
「え?!」
「うん、だから、もういいの。」
そう吹っ切れたような笑顔でリサにしゃべりかけながら、瑠香はまたもぐもぐとご飯を頬張った。
「私が信じてればいいかなーって。リサも昨日言ってくれたじゃない。」