眠り姫の唇

「……。」


「……。」


しばらくお互い無言で自分の頬を好きにさせていると、目の前の女から思いがけない言葉を落とされた。








「前川先輩の事、諦めきれなかったんですか?」






余りにも唐突なその内容に、思わず息を飲む。


「…聞いたのか?」


「いえ…。」


誰にとは聞かなかったが、通じたらしい。


「前川先輩は何も知りません。昨日の事も、多分、あなたの気持ちも。」


それを聞いて、岩城は静かに目を閉じる。

安堵の表情だ。


瑠香は続ける。


「…好きなんですよね?前川先輩の事。」


「なんでそう思う。」


前川にも瑠香にも同じ事をしたじゃないか。むしろ瑠香への方が明らかに激しい。


それでも瑠香は確信めいた瞳で岩城を見つめる。


「見てれば分かります。」


「…。」


「全身で好きだって言ってました。」



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