眠り姫の唇


仕事が終わったら、満面の笑みで三國がオフィスの扉の所に立っていた。


「あぁ、三國お疲れさまー。」

挨拶もそこそこに、瑠香は三國を通り過ぎようとする。


「高江、ちょっといい?」


その一言に瑠香は怪訝な顔をした。


笑顔を貼り付けた童顔の男が瑠香の腕を掴む。



「またどこそこの芸能人が可愛いとかいう話なら…」


「違うって!大丈夫!ちょっと付き合って欲しいだけ。」


「ちょっ…何なの?!」


「…それは聞かないで。」



有無を言わさず引っ張っられてエレベーターに乗り込む。



「本当にやめてよ!」


必死に抵抗する瑠香に、三國がすごい勢いで頭を下げた。


「ごめん高江!でも今回が最後らしいから!」


最後…らしい?


何故か嫌な汗が出た。



< 264 / 380 >

この作品をシェア

pagetop