眠り姫の唇
岩城はただあんぐりと言った感じで、素直にそれを受け取った。
「…そこに口紅がついているじゃないですか。それが桜子さんのと同じ色なので、私かなり焦ってしまって。でも岩城さん見てたらそんな雰囲気ないし、…混乱しました。」
「…。」
「私からも質問していいですか?岩城さん、桜子さんと何もないですよね?」
瑠香も上半身から体を曲げて岩城を真っ直ぐ見つめる。
「何もない。誓う。」
まだその袋に目を落としながら、岩城は当たり前のように言った。
「これ、そもそも俺のじゃないぞ。」
「あ、それはなんとなく分かってました。」
サイズ違うし。という言葉は飲み込んで、瑠香は続ける。
「それで、岩城さんはどうして私と三國の事疑ってたんですか?」
「…会社のパソコンに、匿名でメールが来た。お前とあの男が例の会議室に入っていく画像付きで。」