眠り姫の唇
瑠香はぐっと背中を伸ばし、少し涼しい夜の風に当たった。
…なんてスッキリしているのだろう。
こんなにすっと胸の仕えが無くなるのなら、早く岩城に喋っていれば良かった。
岩城も後から降りてくる。
「岩城さん、見て下さい。綺麗ですね。」
瑠香はきれいなフェンスに近寄りながら夜景と星空を指差した。
これでやっと心から景色が楽しめる。
その横に並びながら、岩城はバツが悪そうに言った。
「瑠香。」
「はい?」
「…なんで今まで黙ってた。」
「…なんででしょうね。」
瑠香はしばらく口ごもり、言葉を選んだ。
「…でも、このタイミングで打ち明けられて良かったです。」
まだ岩城を完全に信じられない状態で問いただした所で、素直に岩城の話を聞けただろうか。
自分はそんな出来た人間ではない。
ちゃんと確信が持ててから、こうやって伝えられて良かった。