眠り姫の唇
「久保井の半分は道楽で出来てるようなもんなんだ。…一回、調子に乗りすぎて色々潰しかけた事があってな。なんとか持ち直したが、あの通りアイツ自身は何も変わっとらん。人のいうことなんも聞かないし。前川だけがアイツのストッパーだ。」
「………。」
規模の違いすぎる話に、瑠香はただただ絶句した。
「会社自体もヘンテコなもんだぞ。なんせ興味を持ったらなんでも手を出すからな。端からみたら何がしたい会社なのかさっぱり分からん。ただ、それを全部形にしてしまうアイツの才能だけはみんな認めてる。」
少し誇らしげに語った岩城の後を追い、瑠香も隣のマシーンに跨った。
軽々と重そうなバーを引っ張りながら岩城が言う。
「…久しぶりだから結構キツいな。」
「前までよく来られてたんですか?」
引き締まった腕をギリギリ言わせて、岩城は歯を食いしばる。
「ふ…っ!。…あぁ、ここが改装工事するまでよく通ってた。体動かすのは嫌いじゃない。」