眠り姫の唇
瑠香は後悔する。
シャワースペースに電気がついている事になんで違和感を覚えなかったのか。
カードキーで管理されている事に安心しきっていた自分を呪った。
ガチャ。
扉を開けた瞬間、まるでさっきまで使われていたような熱気に瑠香は顔をしかめる。
「…あぁ?」
「は?」
広めの浴室に体をゆったりと預けている岩城と目があって、瑠香はその場でビシッと固まった。
軽くパニックになっている瑠香とは対照的に、浴室の縁に肘をかけながら岩城が余裕でニヤリと笑う。
「…なんだ、一緒に入りたかったのか?」
バタン!!
返事を切り返す事もせず、瑠香は扉を閉めてその場に座り込んだ。
な、な、なんで。
なんで?
水音もしなかったし、鍵の番号だって間違ってないはずなのに。
何故に岩城が。
扉ごしに、ほんの微かにざばっと音がして、コンコンと扉がノックされる。