眠り姫の唇

その音に瑠香はハッとして扉越しに怒鳴った。


「ちょっ!まだあがらないで下さいね!!」


パニックになりながら近場にあったバスタオルを体に巻き付ける。


まだあがらないでと言ったのに、扉から岩城がぬっと顔を突き出した。




「真面目に一緒に入るか?」


「そんな事を真面目に聞かないで下さい!!」


瑠香はキーキー喚きながら扉を無理やりしめようとする。


「お前が先に入ってきたんだろう?」


「そ、そーですけどっ。だって岩城さんが入ってるなんて知らなかったし。」



「今日はファミリー用取ってるんだよ。」


そういってグッと腕を引き、岩城は胸に瑠香を閉じ込めて扉をしめた。


「な、なんでファミリー用なんかとってるんですか。普通こういうときは一人用でしょう?」


その濡れた肌からどうにか逃れようと暴れる瑠香だが、いかんせん相手は岩城だ。力では到底かなわない。



足裏に感じるタイルが心を乱す。


まさかお風呂場で岩城と抱き合う事になるなんて想像していなかった。

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