眠り姫の唇
「水音もしなかったし、まさか人が入ってるなんて…。」
観念したように抵抗をやめた瑠香を覗き込みながら、岩城はあぁ、と説明した。
「ここ防音効果抜群だからな。」
なにゆえに。
久保井の謎の気配りに瑠香は首を捻る。
それをみて岩城がおかしそうに笑った。
「なんでそんなわざわざ金のかかることアイツがしたと思う?」
なおも首を傾げる瑠香に岩城が唇を寄せて怪しく囁いた。
「前川が周りに聞こえるって散々ごねたせいらしい。」
「……………………。」
「…意味、分かるか?」
「…え、…それはつまり……。」
まさかな答えに瑠香は限界まで顔を赤らめる。
岩城の意味深な色気を含んだ表情に、勝手に想像が膨らむ。
それはつまり、そういうことなのか…?
普段を知っている人のそんな話…、ちょっと、いやかなり聞きたくない。