眠り姫の唇
「ちょっと、ちょっと起きて下さい岩城さん。」
ぺちぺちと顔を触ると岩城は眠そうに片目を開ける。
「…なに。」
「私、誰だか分かります?」
「誰って瑠香だろ…?」
「さっきから分かってました?」
最初から、布団に引きずり込んだ時から分かってました?
岩城は朝から耳元で叫ばれ、すこぶる鬱陶しそうに眉間にシワを寄せる。
「…なに。何が言いたいんだ。」
「だから…。…ほ、他の女の人と私を間違えてません?」
「あ゙ぁ?」
その一言にまた岩城の機嫌が悪くなる。
「…、酔っ払ったあんたをここに運んだのも俺だし、服が皺になるってやたら怒り出したあんたの服をハンガーにかけたのも俺だし、あんたの隣で寝たのも俺だ。しかも夜中に散々キ……。そんなめちゃめちゃな女を、いったい誰と間違うんだ。」
「……。」
今なんか聞いてはならない事実を知ってしまった気分。
しかも言いかけた言葉が一番重要な事な気がしてならない…。