眠り姫の唇


「で、何してたんだ?」


「あ、佐倉さんに呼び出しくらいまして…。」


途端に岩城の顔が険しくなる。


「おま、なんで一人で行くんだっ。何もされなかったか?…アイツ、話があるっていったら、のらりくらり交わされて、俺結局今日はなにも話せなくてだな…。」


しまった…。というように頭を抱え、岩城は瑠香を気遣う。


やっぱり岩城は深くは話していなかったようだ。


まあ、この強面に怖い顔して話があるとかいわれたら、誰だって逃げたくなるだろう。


たとえ好きな相手でも。



瑠香はこてんと岩城にもたれる。


「…大丈夫ですよ。なんとかこの案件、片付けてきました。もう手出しご無用です。」


「…そうか。」


「その代わり、また何かあったら、すぐに岩城さんに報告しますね。」


「あぁ、そうしてくれ。なんかあった後から言われてもキツいしな。」


岩城はフッと笑って瑠香の髪を撫でる。



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