眠り姫の唇
「岩城さん。」
「ん、なんだ?」
「…キスしてもいいですか?」
「…珍しいな。」
岩城は意外そうに顔をほころばせ、瑠香の顎をくいっと引き寄せる。
これはお祝いのキスだ。
前川ではなく、自分を追いかけて来てくれたという事への。
軽くて甘いキスに酔いながら、瑠香はそのままストンと岩城の胸の中に頬を寄せる。
「不謹慎ですが、嬉しかったです。見つけてくれて。」
「ああ。苦労したぞ。バックはまだオフィスにあったから、社内走り回った。こんなに手間のかかる女は初めてだ。」
そう愛しそうに呟いて、岩城は瑠香の脳天にキスを何回も落とす。
「前川先輩より?」
「当たり前だ。お前だけだよ。俺をこんなに振り回すのは。」
その言葉に瑠香は嬉しそうに笑った。