眠り姫の唇
熱に促されながら、瑠香は岩城の首に腕を巻き付け、言いにくそうに訪ねた。
「…っ、…ほんとに…っ、良かったんですか…?」
「あ゙?なにが。」
集中しろよとばかりに岩城が胸の先に歯を立てる。
「ぁっ…っ、その……、っ、最後まで前川先っ…に、伝えなくて…。」
「あ゙ぁ?」
岩城は上半身を起こし、真っ直ぐ瑠香を見つめた。
その鋭い瞳に耐えれなくて、瑠香はスッと目をそらす。
「今更、無い気持ちをわざわざいっても、向こうも戸惑うし、俺も気まずいだけだろう。なんでそんな面倒くさいことしなくちゃならんのだ。」
ワケが分からんと岩城は眉間にシワを寄せる。
「だって…」
そう口ごもりつつ、瑠香は“無い気持ち”という言葉に正直驚いていた。
本当に、もう前川の事は気持ちとしてなくなったのだろうか。
「…お前。もしかしてまだ疑っていたな。」
「…や、あの…。…スミマセン。」