眠り姫の唇
「…なんかおかしいとは思ってましたけど。」
開いた口が塞がらない。
びっくりし過ぎて怒る気も起きない。
「その後、ベッドで何回も瑠香がキスをねだるもんだから、まぁ、その」
「ギャー!!聞きたくない!!」
「違う!待て!!結局お前途中でまた寝たんだよ。その後のこの中途半端に放置された俺の身にもなれ。」
自分の事は全て棚に上げて、岩城がハァとため息をついた。
「とにかく、前川とか関係なしに、純粋に瑠香を手元に置きたかった。
欲しいと思った。
今手放したら、もうただの他人に戻ってしまうと思って…。
その時は好きとか、あんまり深く考えてなかったが、今思うと、もうお前に捕まってたのかもな。」
そう遠くを見るように懺悔して岩城は瑠香にキスをした。
「…嫌いになったか?」
真意を見極めるように岩城が瑠香の顔を覗き込む。
瑠香はそれに返事をするように、今度は自分からキスをした。