眠り姫の唇
「瑠香。」
「…。」
急に。
あんまり優しく自分の名前を言われたから。
「観念して今は俺の女になっておけ。」
「……。」
「返事は?」
「……ちょっとでも優しくなかったらすぐに逃げますから。」
ブスッと横を向いてそれだけ言うと、岩城はまた声に出してクスクス笑った。
「分かった。」
そういうと、どちらともなく軽くキスをした…。
◆
「…男の匂いがする。」
「へ?!」
りさがクンクン瑠香の後に続いて鼻を鳴らす。
「リサ止めてよ!とりあえずそんな嗅がないで。」
ハエでも払うように手をパタパタさせながら内心瑠香は大いに焦っていた。
「昨日はシャンプーお試し品使ってみただけよ。」
嘘。朝岩城の部屋のバスルームを借りたのだ。
「えー。それにしてはなんか男っぽい匂いだね。」
「なにそれ(笑)駅前で配ってた奴だから全然気にしてなかった。」
「瑠香そういうとこ無頓着過ぎるよ。」
ふぅ…。
去っていく友人にこっそり溜め息をつく。