眠り姫の唇
「(全然分かってない!)」
パソコンに向かいイライラしながらキーを弾く。
あれから唇が赤くなるぐらい散々キスされて、耳元で色々囁かれて。
“どうだ、続きが欲しくなったか?”
あのエロ過ぎる重低音を思い出し、また身体が痺れる。
「(あのエロ冷徹男め!いちいち言い回し方がオヤジっぽいのよ!)」
『欲しい』と言ってしまいたくなる自分をしかり倒して、瑠香はかろうじてお風呂に逃げ出したのであった。
「はぁ…」
今日何度目かのため息をつき、パタンと携帯を開く。
そこには入力した覚えのないアドレス。
「(岩城、修一郎、か。)」
下の名前すら知らなかった人と付き合う事になるなんて、瑠香はこの人生で考えたこともなかった。