眠り姫の唇
丸杉のカフェでアイスココアをブスッとした顔ですする。
レトロな店内をぐるりと見渡しても、客は数人程度。
瑠香は自分の袖をクンクン嗅いで、はぁとため息をついた。
若干アルコール臭い。
即座に家に帰りたい。
しかも髪がガシガシ。
岩城のマンションにはシトラス系のスッキリするシャンプーだけで、リンスが無かったのだ。
早くアパートに帰ってお風呂に浸かりたい。
イライラして携帯を開ける。
6時51分。
あの傲慢男!早くしてくれ!
後5分で来なかったら絶対帰ってやると決めた矢先に、外から軽くクラクションが聞こえた。