眠り姫の唇
◆
「…決めたのか?」
「ちょっと待って下さい。今決めてます。いつも買ってるやつの新しいのが出たんです。でも、やっぱりいつものがいいかなぁ…。あーどうしよ。」
「早くしろ。」
「ちょっと待って下さいって。あ、あれなら先車に戻っといてもらっても大丈夫です。」
「…いや、それはいい。更に長引きそうだから。」
瑠香のアパートにつくまでに薬局があったので先にそっちによる。
岩城と並んでシャンプーコーナーにいるこの現状に瑠香は若干違和感を感じていた。
すごく変な感じ。
そもそも岩城の顔にこういう場所が似合わないのだ。
ワインとか夜景なら似合いそうだけど。
いい加減痺れを切らした岩城は、瑠香の手から両方ともシャンプーを奪いガサッとカゴに入れる。
「え?」
「もう両方とも買えばいいだろう。」
「いや私今日そんなお金ありません。」
「誰がお前に払わすなんて言った。」
むんずと同じ種類のリンスやらトリートメントやらをガサガサカゴに突っ込み、不機嫌そうに岩城はレジに向かう。