眠り姫の唇




「…決めたのか?」


「ちょっと待って下さい。今決めてます。いつも買ってるやつの新しいのが出たんです。でも、やっぱりいつものがいいかなぁ…。あーどうしよ。」


「早くしろ。」


「ちょっと待って下さいって。あ、あれなら先車に戻っといてもらっても大丈夫です。」


「…いや、それはいい。更に長引きそうだから。」


瑠香のアパートにつくまでに薬局があったので先にそっちによる。

岩城と並んでシャンプーコーナーにいるこの現状に瑠香は若干違和感を感じていた。


すごく変な感じ。


そもそも岩城の顔にこういう場所が似合わないのだ。


ワインとか夜景なら似合いそうだけど。


いい加減痺れを切らした岩城は、瑠香の手から両方ともシャンプーを奪いガサッとカゴに入れる。


「え?」


「もう両方とも買えばいいだろう。」


「いや私今日そんなお金ありません。」


「誰がお前に払わすなんて言った。」


むんずと同じ種類のリンスやらトリートメントやらをガサガサカゴに突っ込み、不機嫌そうに岩城はレジに向かう。




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