眠り姫の唇
何故か瑠香は思わずそのまま寝たふりをしてしまった。
テレビをプチンと消す音と、部屋の灯りを小さくする音。
冷蔵庫の扉を開けて、ビールをプシュッと開ける音。
静かに耳を澄ませながら、ああ、岩城さんは毎日ここで生活してるんだなぁと瑠香は思った。
しばらくして、布団が持ち上げられ、岩城の身体が隣に滑り込んでくる。
瑠香はドキッとしたが起きているのが気付かれないようにただただじっとしていた。
するっと自分の身体に巻きついてくる腕。
何かされるのかと固まっていたが、ただギュッと抱きしめられ、岩城はそのまま眠りに落ちたようだった。
「(………。)」
岩城の寝息が耳をかすめる。
その規則正しいリズムに、瑠香もなんだか安心してしまってそのまま眠ってしまった。
誰かと寄り添って寝る。こんなに暖かい気持ちで眠れたのは、久しぶりだった。