眠り姫の唇
「実は久しぶりなんですよゲーセン。」
車に乗り込みながら瑠香はウキウキを隠せない。
学生の頃はよく友人とはしゃぎに行っていたが、会社に入ってからはそういう機会も減って、全くと言って良いほど足を運んでいなかったのだ。
「私クレーンゲームが特に好きです。私の友達にすっごいうまい子がいて、いっつも大物ゲットしてしまうんですよ。羨ましいったらありません。」
そう言って語る瑠香を横目で見ながら、岩城はため息をつきつつも口元は微笑んでいた。
「ガキ…」
「あ、今クレーンゲームバカにしましたね。岩城さんがもし下手くそだったら公衆の面前で大声で笑いますから。覚悟してください。」
そう憤慨しながら瑠香はスカートの下で足を組む。
意外にスースーする足元に、少し気合いを入れすぎただろうかと瑠香はちょっとだけスカートを下に引っ張った。
岩城は、今日は髪を固めて居ない。
いつもより数段若く見える岩城がゲーセンに居ても違和感はないだろう。むしろイケメン過ぎて違う意味で目立ちそうだ。