眠り姫の唇
「いや、かなり久しぶりだ。」
そう何気なしに言って、ぬっとその大きな猫を瑠香に押し付ける。
「最後に行ったのは…もう覚えてないぐらいだな。4年前の忘年会の帰りぐらいか?」
「えー。嘘言わないで下さい。あんな一発でとれるなんてそうとう練習してますよ。」
岩城は怪訝な顔をして瑠香に一別を送る。
「あんな毎回商品の形状も重さも滑りやすさも、アームの力も操作の加減も違うものをどう練習するんだ。どう考えてもセンスの問題だろう。」
もっともな言い分に瑠香は何も言い返せない。
「あ、岩城さんっ、次アレしましょう!」
勝てない戦はしない主義だ。瑠香はそうそうに話題をかえる。
「…無謀だな。カーレースでお前に負ける気がしない。」
「いいましたね!岩城さんが負けたら今度土屋堂のスペシャルパフェおごってください。」
「いいだろう。お前が負けたらどうする。」
「私は免許持ってないんで何もかけません。ハンデです。」
「おい、そんなものが通用する世の中じゃない。お前が負けたら、
今夜たっぷり鳴かせる。」
「どさくさに紛れて何恐ろしい事言ってるんですか!」