眠り姫の唇


「スタートだ。」


「やっ、ちょ、抗議したいことがまだ山ほどあるんですけど!」


…そんな感じで、岩城と瑠香は子供みたいにはしゃぎまわりながら、あっという間に時間が過ぎていった。













「はー、楽しかったー!」


ぬべんと前に倒れながら、瑠香は助手席で笑顔を作る。


「ありがとうございました岩城さん。」



前の信号を見ながらも岩城はクイッと口元を上げる。



「晩飯、なにか要望はあるか?」


「んー…岩城さんのオススメで。」


「そうか。分かった。…ちょっとお前には早いかもしれんが。」


「あの、私25歳って知ってました?」


「初めに俺を30って言ったのどこのどいつだ。」


あ、根に持つタイプだ。

瑠香は首をすくめて大人しくしていた。













そこは、薄暗くて、凄く雰囲気のあるお洒落なショットバーだった。

その狭いカウンターに堂々と足を踏み出して岩城は適当に腰掛ける。

「いらっしゃい」


少し髪が長めで雰囲気のあるバーテンダのお兄さんがニッコリ笑いグラスを磨いていた。



「…瑠香。なにしてる?」


岩城は早く来いと瑠香を呼ぶ。

瑠香は雰囲気に呑まれて、一歩遅れながら室内に足を踏み入れた。



「あれ、修一郎さんが人連れてるなんて珍しいね。」









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