眠り姫の唇
その名前を思い出し、瑠香は固まる。
「…いったい“誰”の子猫何でしょう。」
「さぁな。」
そう言って岩城は笑った。
ぬいぐるみを抱え、ふらふらと瑠香は車を降りる。
「なんで私またここにいるんですか…。」
そういいながらも瑠香は岩城の部屋の扉をくぐった。
まぁ岩城は一言も瑠香の家に送るなんていっていない。
それでも若干騙された気がするのは何故だろう。
多めに荷造りした荷物を半分置いていったのは正解だった。
明日もここから出勤する事を覚悟して瑠香はソファーにドサッと座る。
「お前先入るか?」
お風呂を指差し、岩城は上の服をおもむろに脱いだ。
どこのジムで鍛えてるんだと突っ込みたくなるような綺麗な腹筋に、瑠香は思わず顔をそらした。
「いや、脱ぎかけてるんだったら岩城さんが先に入って下さいよ。」
手をギュッと膝の上で握り、瑠香は見るまいと必死だ。
「あ?これは熱いから脱いだだけだ。」