眠り姫の唇


「いいから先に入って下さい。」


「…何怒ってるんだ?」


不振に思い、岩城はそのままの格好で瑠香に近付く。


目の前にやってくる男に瑠香は慌てて隣に転がっていたぬいぐるみを顔の前に持ってきた。



「なんですかなんなんですか腹筋自慢ですか。」


「あ゙ぁ?」


「早くお風呂に入って下さいってば。」


「さっきから喧嘩売ってるのか。」


小さくなってぬいぐるみで顔を隠す瑠香の手を、強引に開く。


「瑠香。なんで目をそらす。」

「…。」


ボスッと落ちたぬいぐるみに視線を置き、瑠香は困ったような顔をしていっこうに岩城を見ようとはしなかった。


「こっちを見ろ。」


「…。」


「瑠香。」





「……だって岩城さん、裸なんですもん。」



恥ずかしそうにする瑠香に、岩城はまた怪訝な顔をする。



「履いてるじゃないか。」


「上です上!」


「こんなの男なら裸の内に入らない。」


胸があるわけじゃあるまいしと岩城はため息をつく。



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