眠り姫の唇
…これって、身体目当てなんだろうか。
自分の醜い感情に瑠香はずるずると嫌悪感に蝕まれた。
自分にはそれだけの目的で触られたくないくせに、自分はちゃっかり相手の身体を欲しがっている。
完璧なプロモーションとテクニックを持っている岩城が悪い。と全部相手のせいにしてしまいたいが、それでは誰かさんと一緒になってしまうのでやめておいた。
「…私、岩城さんのキスが好きです。岩城さんの声も、岩城さんの腕も。でも、それが岩城さん本人が好きなのか良くわかりません。」
それだけ言うと、瑠香は哀しげに岩城から視線を外した。
呆れただろうか。
身体だけを欲する淫乱な女だと思われただろうか。
しばらく身を硬直させていたが、突然岩城が大きなため息を付いて瑠香の身体に被さってきた。
いきなりの事に瑠香は身体をビクッとさせたが、それから岩城は自分に触ってこようとはしない。
ただ身体を抱きしめているだけだった。
「はぁー…。…焦るだろうが。あんなに気持ち良さそうにキスしといて、本当は嫌だったなんて言われたら、俺は土でも食えるぞ。」
「?」
土?
よく分からない表現だ。