眠り姫の唇
「高江ちゃん、そこの資料一枚にまとめて人数分コピーしといて。後今回の会議にも高江ちゃん参加らしいから、それぞれに意見書いて準備しといてね。」
「はーい。」
瑠香は机の上にある本や書類をガサッと持ち、自分の席に移動する。
毎回思うが雑用か会議参加かどちらかにしてほしい。
特に雑用は後輩の男の子に是非押し付けてやりたい。
自分だけ毎回仕事が二倍になるのだ。
「うわ。瑠香またそれやるの?」
リサが小声で耳打ちする。
「いじめよ、いじめ」
瑠香はそう呟き、目の前の資料に目を通しながらパソコンのキーを細い指で叩く。
「無駄に器用なのがダメなのよね。瑠香の資料が一番見やすくて分かりやすいし。」
「アリガトウ。」
「ホントに器用貧乏ね。そのうち男もハズレくじ引かないかって私は冷や冷やしてるんだから。」
友人はポンと肩をたたいて、去り際に瑠香の机に缶ジュースを置いていく。
…時々こうやって憎いことするからリサの友達はやめられない。
男だったら惚れてたかもしれない。
「リサ、今日の予定は?」
瑠香は去っていくリサの背中に投げかける。
「北村商事のイケメンと合コン♪」
さいですか…と瑠香はゆっくる机に向き直った。