センセイと一緒【完】
その視線に鈴菜は背筋が凍るような気がした。
……昔、鈴菜が柊史のお気に入りの虫を逃がしてしまった時と全く同じその表情。
なまじ顔が綺麗な分、迫力が倍増する。
「では答えてもらおうか。……胃と小腸を繋ぐ臓器の名称は?」
柊史はどこか楽しげな目で鈴菜を見る。
鈴菜は焦りながら言った。
「す、膵臓?」
「……ランゲルハンス島の住人か? お前は」
呆れた声で柊史は言う。
ちなみに答えは十二指腸だったらしい。
がっくりと肩を落とした鈴菜を、直樹が心配そうに見つめる。
……情けないところを見られてしまった。
その視線にますます落ち込む。
「……」
こんなことではいけないと思いつつも授業に身が入らない。
……これが恋の病というものだろうか。
はぁと息をつき、鈴菜は教科書に視線を戻した。