センセイと一緒【完】
考えてみれば、直樹ほどの人に彼女がいないはずがない。
この校内にいないにしても、あれだけの容貌、そしてあの性格ならば彼女はいて当然だろう。
なぜこれまで気付かなかったのか。
胸に黒いものが広がっていく。
それは凄まじい勢いで鈴菜を飲み込み、翻弄する。
鈴菜はなすすべもなく呆然と二人の姿を見つめていた。
視界が滲んでいく。
鈴菜の手から力が抜け、手から本が滑り落ちる。
バサッ、という音が廊下に響き渡る。
「……森下さん?」
前を歩いていた尚哉がその音にはっと振り返った。
踵を返し、持っていた本を床に置いて鈴菜に歩み寄る。
鈴菜はそれに気づいた様子もなく、ただ呆然と窓の外を見つめている。
「どうしたんですか、森下さん?」
「……」