センセイと一緒【完】
本を床にばら撒いたことに気付き、鈴菜は慌てて本を拾おうとした。
が、その手を尚哉が押しとどめる。
「いいですよ。僕が運んでおきますから」
「えっ……」
「森下さんは、少し落ち着いたら視聴覚室に来てください。いいですね?」
尚哉は言いながら、指を伸ばして鈴菜の頬にそっと触れる。
涙の跡をなぞる、その指先。
鈴菜は自分が泣いていたことに気付き、息を飲んだ。
尚哉は労わるようにそっと鈴菜の頭を撫でた後、本を拾って踵を返した。
そのまま視聴覚室の方へと歩いていく。
鈴菜はその背を呆然と見つめていた。