センセイと一緒【完】
鈴菜の言葉に尚哉は足を止めた。
鈴菜に向き直り、じっと見下ろす。
……あの時と同じ、気遣うような視線。
鈴菜も足を止め尚哉を見上げた。
「気持ちの整理は、つきましたか?」
「……はい……」
「そうですか。……今は辛いかもしれませんが、辛さは時間が経てば薄れていきます。時間は忘却の薬と言いますが、僕もそう思いますよ」
「白崎先生……」
「森下さんはまだ若い。すぐに忘れられますよ。……僕とは違ってね」
自嘲するように尚哉は言う。
鈴菜は驚き、眉を上げた。
鈴菜の視線の先で、尚哉は少し笑って口を開いた。
「僕は、ずっと昔からある女性に想いを寄せています。もう10年近くなりますね」
「えっ……」