センセイと一緒【完】
驚く鈴菜に、尚哉は甘いテノールの声で言う。
……鈴菜を見つめる真剣で切ない瞳。
初めて見る尚哉の瞳に鈴菜は息を飲んだ。
「今は立場も変わり、想いを伝えることすら許されない状態です。運命の悪戯とでも言うのか……残酷な偶然とでも言うのか……」
「……」
「何度か、忘れようともしました。けれどどうしても、忘れられない。もう僕の魂に染みついてしまっているんでしょうね……」
とても切なげな、尚哉の瞳、声……
鈴菜は胸を打たれ、尚哉を見上げた。
以前、尚哉が誰かに恋しているのではと思ったことがあったがそれは当たっていたらしい。
鈴菜はしばしの沈黙の後、口を開いた。
「……白崎先生なら、きっと、大丈夫ですよ」
「森下さん?」
「きっと、想いは伝わりますよ。そんな気がします」