センセイと一緒【完】
<side.尚哉>
元旦の夜明け前。
厳冬の凍るような空気の中。
尚哉は白い斎服に身を包み、桜羽神社の拝殿の隅で歳旦祭の準備をしていた。
歳旦祭は元旦の神事で、尚哉も毎年祭員として祭に参加している。
ちなみに祭を執り行う斎主は、尚哉の実兄の恵一だ。
白崎家は代々桜羽神社の宮司をしており、今は兄の恵一がその役についている。
そして尚哉は昔から、補佐役として恵一の祭事を手伝っていた。
しかし戸籍上は兄と尚哉は従兄弟という関係になっており、尚哉は叔父の家に同居している。
尚哉の兄、恵一は白崎家本家の嫡男として生まれた。
そして尚哉は、父と妾の間に生まれた子供だった。
正妻の強い要望で尚哉は叔父の家に養子に出され、尚哉は小学生の頃まで自分が叔父の実子であると信じて疑っていなかった。
しかし尚哉の神事の呑み込みの早さや神楽などの才能に目を付けた実の父は、尚哉を実家に呼び戻し、神職に就けようとした。
尚哉はそれを拒み、叔父の口添えもあって、神事の時だけ本家を手伝うという約束で今も叔父の家に同居している。
……大人の都合で振り回された少年期。
その傷は尚哉の心の中によどんだ澱のように沈んでいる。