センセイと一緒【完】
「……元旦、か……」
――――今年はどんな一年になるのか。
尚哉は考えながら立ち上がり、倉へと向かった。
祭具が置かれた棚の中から、今日の歳旦祭で使う白い紙垂や玉串、木笏などを取り出す。
……その、棚の隅に。
古びた木製の細長い箱がひっそりと置かれている。
尚哉は手を伸ばし、箱を開けた。
中から出てきたのは、龍笛と呼ばれる神楽で使う笛だ。
「……」
尚哉は笛を取り出し、懐かしそうに目を細めた。
優しく温かい……けれど切ない記憶。
「……鈴菜」
記憶の中で優しく響く、その名前。
尚哉はしばし笛を眺めた後、箱にしまいそっと蓋を閉じた。
<***>