センセイと一緒【完】



<side.直樹>



教室の後ろの方から、和泉と鈴菜、そして女子達の楽しそうな笑い声が聞こえる。

直樹ははぁと息をつき、椅子の背に凭れ掛かった。

まだ、鈴菜の隣が和泉で良かったかもしれない。

もし他の男子生徒が鈴菜の隣に来たら……自分は嫉妬を隠せないだろう。

半年前までは感じなかった感情。

……けれど、今は。

鈴菜の隣に他の男が座るのは許せない、と思ってしまう。


「……」


直樹は目を閉じ、鈴菜の声に耳を傾けた。

和泉や他の女生徒たちの大きな声に混ざって聞こえてくる、控えめな、けれど鈴のように心地よい声。


去年の春。

……鈴菜が転入してきた時。

直樹は鈴菜の顔を見、息を飲んだ。

記憶の中にある、お下げの女の子の面影と全く同じ瞳。

それは、直樹の中の懐かしく温かい記憶だった。


< 145 / 294 >

この作品をシェア

pagetop