センセイと一緒【完】



昔、まだ鈴菜が桜羽市にいた頃、柊史はよく鈴菜と和泉の面倒を見てくれた。

川に落ち、ずぶ濡れになった鈴菜に着ていた服を貸してくれたこともある。

……ちょうど今のように。

柊史にとって、鈴菜は和泉と同じく妹のような存在なのだろう。

今は担任教師なので、少し離れたところから見守ってくれている感じだが。

けれどこうして優しさに触れると、昔に戻ったような気分になる。


先生だけれど……

少し近い、微妙な関係。


そんなことを考えながら、鈴菜はシャワーブースを出た。

濡れた服を片手に、ぺこりと頭を下げる。


「先生、ありがとうございました」

「……大丈夫か?」

「はい。後で服をお返しします」


言い、鈴菜はもう一度頭を下げて柊史の部屋を出ようとした。

サンダルを履き、ドアを開けようとする。

と、その時。

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