センセイと一緒【完】
3.どんな思いで・・・
19時になる少し前。
鈴菜はごみ袋を片手にバーベキューの片づけをしていた。
水場に残された野菜のクズなどをごみ袋に入れ、ホテルの裏にあるごみ置き場へと持っていく。
その途中、通路の脇に桜が植えられていることに気付き、鈴菜は思わず足を止めた。
本州で見る桜より少し色が濃い。
緋寒桜だろうか。
ガーデンライトで下からライトアップされた桜は夜闇に映え、とても美しい。
夜に見る桜は昼に見る桜より、どことなく優艶な気がする。
沖縄は1月から桜が咲くと聞いてはいたが、間近で見れるとは思わなかった。
……と。
桜を眺めていた鈴菜の耳に誰かの話し声が聞こえてきた。
ふと脇を見ると。
「……あれは……」
尚哉と、C組の……確か、村居さんだ。
村居さんはまっすぐな黒髪を肩のところで切り揃えた、いわゆる『大和撫子』的な印象の女の子で、男子生徒からわりと人気がある。