センセイと一緒【完】
……あれは、9年前の春。
八坂神社の境内。
叔父の家は八坂神社の宮司をしており、尚哉も昔から八坂神社の神事を手伝っていた。
その日、尚哉は神社の境内で龍笛の練習をしていた。
自分の意志でもなく強制的に参加させられる神楽。
自分の出生の秘密を知ってから、尚哉は神事や神楽など自分に纏わりつく全てを鬱陶しいと思っていた。
そんな荒れた心で笛の練習など身が入るはずもない。
尚哉は井戸の縁に座り、笛を下ろして譜面をぐっと握りしめた。
その時。
『……お兄ちゃんが、お笛を吹いてたの?』
可愛らしい声。
見ると、まだ小学校の低学年ぐらいだろうか。
鈴のようなまん丸な目の、お下げの少女が尚哉をじっと見つめていた。
その澄んだ純粋な瞳に尚哉は目を奪われた。
『きれいな音だね』
『……っ』