センセイと一緒【完】
尚哉はぐっと唇を噛みしめた。
こんな荒れた心で吹いた笛の音より、この子の瞳の方がずっと綺麗だ……。
――――これが、鈴菜との初めての出会いだった。
それから尚哉と鈴菜は、八坂神社の境内で何度か会うようになった。
……が。
その頃、ちょうど反抗期だった尚哉は、鈴菜に素直に接することができなかった。
鈴菜は自分を慕ってくれていたのに……
自分は鈴菜にあんな態度しか取ることができなかった。
伝えるべき言葉はいっぱいあったはずなのに……。
……子供だった自分。
いくら後悔しても今となってはもう遅い。
そして、あの日……。
「……っ、鈴菜……」
尚哉は目を閉じ、呻くように呟いた。
……思い出すだけで胸が引き攣れるように痛む。
涙で滲んだ、鈴菜の大きな瞳。
頬を伝い落ちる、透明な滴。