センセイと一緒【完】
「ちょっと我慢して、森下さん」
耳元に囁かれるテノールの声。
爽やかな柑橘系の香り。
……直樹だ。
「……っ」
「しっ、静かに」
言い、直樹はさらに鈴菜の体を抱き寄せる。
鈴菜は突然のことに驚き、体を強張らせた。
……胸がドキドキする。
こんなに密着していたら心臓の音が聞こえてしまうかもしれない。
そう思うとさらにドキドキしてしまう。
「……」
やがてドアが開き、見回りの先生が顔を覗かせる気配がした。
しばし後、パタンとドアが閉じる音とともにその気配は消えていく。
……よかった、やり過ごしたようだ。
と鈴菜がほっと息をついた、その時。