センセイと一緒【完】
鈴菜が近づくと、柊史は顔を上げて驚いたように鈴菜を見た。
どうやら柊史は植物を観察していたらしい。
「何か珍しい植物でもありましたか?」
「森下か。……ほら、これを見てみろ」
言い、柊史は鈴菜の腕を掴んで自分の近くに引き寄せた。
ふわっと香るホワイトムスクの香りに、一瞬ドキッとする。
柊史は少し背をかがめ、脇の草薮に生えている植物を指差した。
「ヒハツモドキだ。本州のフウトウカズラに似てるが、ちょっと違うだろ?」
……そもそもフウトウカズラが何たるかがわからない。
無言の鈴菜に、柊史は楽しそうに続ける。
「フウトウカズラとは葉がちょっと違う感じだな。確かこいつはコショウ科で……」
柊史は手を伸ばし、興味深げに葉の裏を見たり茎を触ったりしている。
その姿は昔、川原で見た時と全く変わっていない。