センセイと一緒【完】



鈴菜が近づくと、柊史は顔を上げて驚いたように鈴菜を見た。

どうやら柊史は植物を観察していたらしい。


「何か珍しい植物でもありましたか?」

「森下か。……ほら、これを見てみろ」


言い、柊史は鈴菜の腕を掴んで自分の近くに引き寄せた。

ふわっと香るホワイトムスクの香りに、一瞬ドキッとする。

柊史は少し背をかがめ、脇の草薮に生えている植物を指差した。


「ヒハツモドキだ。本州のフウトウカズラに似てるが、ちょっと違うだろ?」


……そもそもフウトウカズラが何たるかがわからない。

無言の鈴菜に、柊史は楽しそうに続ける。


「フウトウカズラとは葉がちょっと違う感じだな。確かこいつはコショウ科で……」


柊史は手を伸ばし、興味深げに葉の裏を見たり茎を触ったりしている。

その姿は昔、川原で見た時と全く変わっていない。



< 195 / 294 >

この作品をシェア

pagetop