センセイと一緒【完】
鈴菜は中庭の芝生の上に横たわり、微睡んでいた。
9月中旬。
季節終わりの台風が過ぎた翌日、湿気を帯びた生暖かい風が中庭の木々を揺らして吹き過ぎていく。
中庭の隅に植えられた金木犀の花が昨日の雨で芝生に落ち、まるで琥珀を散らしたかのように芝生を黄色く染めている。
「……ふぁ……」
森下鈴菜。17歳。高校二年生。
耳の下で揃えられたナチュラルボブの黒髪に、標準体型より少し細めの体つき。
名前の通り、鈴のような大きく丸い目がチャームポイントの普通の高校生だ。
鈴菜は高校二年の4月に『桜羽南高校』に転入してきた。
転入して半年。ようやく学校にも慣れてきたところだ。
鈴菜は眠たげに眼をこすり、ごろんと寝返りを打った。
鈴菜はいつも昼休みは中庭で過ごしている。
『桜羽南高校』は桜羽市の南に位置し、海沿いの原生林を切り開いて作られた共学の公立学校だ。
まだ新しい学校だが、桜羽市の中では二番目の進学校で人気もそれなりに高い。
市内の高校の中で最も広い敷地面積を誇るこの高校は、全体的にゆったりとした造りで、今鈴菜がいる中庭もテニスやサッカーができるぐらいの広さがある。