センセイと一緒【完】
直樹は立ち上がって教室を出ていく。
声をかけそびれた鈴菜はその背を見送った後、机の上に広げた前回の学級新聞に目を通した。
学級新聞は奇数月に発行している。
クラスによっては出したり出さなかったりという感じらしいが、直樹が委員長をやっているこのクラスではきっちり定期的に発行されている。
内容は実用的で、なおかつ面白い。
直樹はこういうことに関して才能があるらしい。
やがて直樹がパックのお茶を二つ持ち戻ってきた。
慌てて財布を出そうとした鈴菜に、いいよと首を振る。
「俺が頼んで手伝ってもらってるわけだからね。気にしないで」
「……ありがとう」
こういうところも女子に人気がある理由だろう。
鈴菜は差し出されたほうじ茶のパックを受け取った。
鈴菜は昔からほうじ茶が好きで、お茶と言うとたいていこれを選んでいる。
和泉にはババくさいと茶化されるが、好きなものはしょうがない。
そんな鈴菜に、直樹が目を細めて笑いかける。
「森下さんはほうじ茶が好きだよね?」
「え、なんで知ってるの?」
「もう二週間、隣にいるしね。いつも机の上に載ってるものを見ればわかるよ」
「へぇ……」