センセイと一緒【完】
「あれ? ……直樹君と森下さん、何してるの?」
浜田さんは剣呑な瞳で二人の方へと歩いてくる。
あまり見られたくない人に見られてしまった。
と背筋を強張らせる鈴菜の前で、直樹はいつもの笑顔で浜田さんに笑いかける。
「学級新聞を作ってたんだよ。ほら、森下さん、学級委員だから」
「……へぇ」
浜田さんは胡散臭げに鈴菜をじろじろ見ていたが、机の上に学級新聞が置いてあるのを見、軽く息をついた。
公ではないが、直樹にも和泉にもファンの集団がいる。
鈴菜はどちらにも属していないつもりでいるのだが、どうやら周りからは和泉ファンと思われているらしい。
なので直樹と仲良くしているところを見られると、直樹ファンの怒りを買ってしまう。
今回は頼まれたとはいえ、うかつだった。
鈴菜は手早く帰り支度をし席を立った。
これ以上ここにいても誤解を生むだけだ。
仕事は終わったし、帰ろう。
……と思い、鈴菜は口を開いた。
「じゃあ私、そろそろ帰るから。笠原君、お疲れさま」
「お疲れさま」
直樹は目を細め、朗らかな笑みを浮かべる。
鈴菜は自分の荷物を取り上げ、教室を後にした。