センセイと一緒【完】
3.生物部にて
鈴菜は鞄を片手に廊下を歩いていた。
もう五時半を過ぎているが、まだ夕日が廊下を照らしている。
夕闇に沈んだ廊下はどこか寒々しく、人影が少ないこともあってか物寂しい空気に満ちている。
鈴菜は昇降口の近くまで来たところで『進路希望調査票』をまだ出していないことを思い出した。
昇降口から渡り廊下を渡れば職員室や実習室がある。
ついでだから出していこうと思い、鈴菜は渡り廊下の方へと向かった。
その時。
「鈴?」
昇降口から声を掛けられ、鈴菜は足を止めた。
見ると、ジャージ姿の和泉がタオルを片手に昇降口の方へと歩いてくる。
和泉は弓道部に所属しているが、テニス部やバスケ部などいろいろな部活に顔を出している。
和泉はスポーツに関してもオールマイティで、あちこちの部活から引っ張りだこだ。
ちなみに鈴菜は文科系の歴史研究部に在籍している。
「鈴がこんな時間までいるなんて珍しいね?」
和泉は驚いたように鈴菜を見る。
鈴菜は少し笑った。